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1995年シンポジウム1996年ワークショップ舞台芸術総合センター(仮称)計画

ボードビル・ワークショップ
−大阪発 笑いのパワーを世界の舞台へ−

澤田隆治/プロデューサー


 当初の企画にはなかったが、澤田講師の要望で事前ワークショップが行われ、受講生全員がこれを受けた。目的は、ワークショップを「公開」とするための、卑猥な表現等に対する指導であり、受講生の世代特有の言葉について把握する意味もあった。実際には、公開ワークショップでの発展性に考慮し、「ネタ」への助言もなされ、変更する受講生もあった。
 ワークショップ当日は、事前に募集した観客に公開で行われ、常に観客との関係性の中で進行した。開始のあいさつや受講生の紹介など、進行のおりおりに、講師は、受講生の前で観客に語るという形で、演芸や大阪での位置づけ、若手の心構えなどを語り、受講生は順次、ネタを観客に披露し、講師からアドバイスを受けた。また、30分の休憩を挟んだ後、照明の変化や出の音楽の使用など、雰囲気を変えて、発表会を行った。

はじめに

 ワークショップにはいろいろとありますが、「お笑い」のはありません。「笑い」は出会い頭の面白さが80パーセントを占め、マンネリの面白さなど予期した笑いの楽しみはわずかです。だから、予め「笑い芸」を検討する過程は、内々で「手見せ」を行う以上の発展−例えばワークショップという形−にはなりにくいのです。これが初めての「お笑いワークショップ」です。
 ラジオメディアに演芸が乗るようになって70年、テレビの歴史は40数年を数えました。演芸は、メディアの歴史とともに多くの人の支持を得、地位を上げました。今の、お笑いタレントのメディアでの「強さ」はテレビと無関係ではありません。受講者も、ほとんどが寄席でなく、テレビの「お笑い番組」を見て面白さを発見し、触発されています。しかし、できそうでできない所から、苦しみが始まります。ギャップを埋めるのが私の役目です。
 本日は、同じネタで2回見てもらいます。どこまで変わっているか興味がわけば楽しめるでしょう。見知らぬ新人の芸ですが、大阪には、それを楽しむ風土があるので成り立つと思います。

受講者へのアドバイス

プレゼンテーション
 コンビらしく一緒に舞台に出る、頭を下げてあいさつをする、舞台上では照れないでお客さんに顔を見せるなどは芸を見せる上の基本と心得る。

漫才
 ステージでの主導権はボケにある。それにツッコミが抵抗を持つとコンビは別れる。ボケもツッコミも、最初は前に出る積極性が必要だが、次第に相手がウケた事を、それでよしと認める度量が必要。ネタは繰り返すごとに変化する。コンビの受け答えや客席の反応にあわせ、変化できるよう、柔軟性を養う。

ネタ
 昔のネタは方法論をつくるまでの教科書として利用し、自分の生活体験をもとに作り上げることが基本。物まねはオリジナルをよく理解しなければ芸にならない。
 繰り返しや、ズレなどの「笑い」の基本的要素は、工夫して新しい笑いに結び付ける。マイナーなネタは、爆発的なパワーや連射する量で圧倒して「笑い」につなげることもできるが、普通は、わかるネタがあってこそ生きる。漫談手品がある程度まじめに手品を見せてこそ成立するように、ある程度きちんと見せて客を引きつける。
 落ちにいたるまでの全体が笑い芸なのだから、落ちに拘ったり、頼りすぎない。

表現
 素人っぽさが笑いにつながることもあるが、視線が定まらないなど、日常の態度を見せるのは芸ではない。
 会話だけでなく、表情や間にボケる工夫が必要。ツッコミは、勢いやタイミング、裏声が漫才らしいリズムをつくる。

コント
 キャラクターの年令などが、出演者の実際に合わなければ成り立たないので、小道具や衣装などの演出にも工夫が必要。
 たくさんのショートコントの積み重ねや、数本の掴みと少し長めのコントなど、構成の工夫と歯切れのよい展開が必要。
 メリハリは「笑い」を取りやすくする。人数が多いコントの場合も、皆でうやむやにツッコミを入れるより、一人でも鋭くはっきりとつっこむ方が効果的。

スタンダップ・コメディ
 アメリカで成立。劇場としての寄席がなくなり、「笑芸」を「ライブ」として見せるようになった東京でもウケているスタイル。テレビとライブで二極分解しながら認められているようだ。

講評

 私と一対一の事前ワークショップでは、私に対する抵抗が見えました。自分にこだわり、勝手に直されてたまるかという抵抗です。それが、お客さんに見せてウケないと、やっと反省します。ここで助言が響くかが勝負どころです。
 「笑い」に純粋な客観性はありません。主観的に面白いと思ったものや、誰かから面白いと言ってもらえた経験だけが拠り所です。この感覚が正しければたくさんの人に迎えられますが、センスが違った場合は受け入れられません。この場で、仲間でない、つまり客観にやや近い人間に晒した事で、彼らは悩み始めているのです。
 「役者を生かすも殺すも拍手次第」と言います。笑いで拍手を呼ぶのは大変で、まずは笑いを取ることところから始まります。役者や歌手は拍手を、「お笑いタレント」は笑いを何よりのカンフル、栄養として育てられるのです。

−発表会−

むすび

 発表会が終わりました。ウケた人もウケなかった人もあります。きっと、まだ「客がいい」「悪い」と思っているでしょう。「お客さまは神様です」という言葉が分かるようになった時、はじめて一人前の芸人になると思います。
 「お客さま」が「神様」なのではなく、神様とは自分の気持ちの反映、鏡です。ステージに立つ者が一所懸命にやれば反応し、手を抜けば反応しません。だから舞台ではお客さんの顔を上から下まで見ながら一所懸命にやるのです。芸人になって、特に、売れてしまうと、お客さんをなめてしまいがちですが、その瞬間に自分のポジションがなくなってしまうことを戒めて「お客さまは神様です」と言うのです。
 本日の観客の皆様はすばらしい「神様」でした。皆もがんばってくれると思いますので、機会があれば、ぜひ声をかけて励ましてください。これをお願いして終わりにしたいと思います。
(プロフィール)

澤田隆治/プロデューサー:

1955年の朝日放送入社以後、ラジオの演芸担当プロデューサーからテレビのディレクターとして『てなもんや三度笠』『スチャラカ社員』などのコメディ番組を担当。ドラマ、バラエティ、報道の制作を経て、1975年にテレビ番組製作会社、(株)東阪企画を設立。10年以上続いた「花王名人劇場」で漫才ブームの仕掛人として多くのスターを世に出し、80年代の笑いをリードする役割を果たす。著書に『私説コメディアン史』『笑算われにあり』『上方芸能列伝』など。(社)全日本テレビ番組製作社連盟顧問。

宛先・お問合せ先

大阪市市民局文化振興課「ワークショップ」係
〒530 大阪市北区中之島1ー3ー20
TEL. 06-208-9167

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Performing Arts Symposium Osaka 95 Page (6.vaudeville workshop)
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