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遊気舎デヴィッド・ルヴォー惑星ピスタチオ|| 事業趣旨
1995年シンポジウム1996年ワークショップ舞台芸術総合センター(仮称)計画


基調講演
「世界都市・大阪にふさわしい
舞台芸術総合センター(仮称)のイメージと役割」

高田公理/武庫川女子大学教授



舞台芸術総合センター(仮称)とその公共性

 深刻な経済不況の中でも、海外旅行や音楽、演劇の公演に人が集まるのを見ると、人々が求めるものが変化しつつあるように感じられます。
 1980年代半ばを境に、文化や娯楽の魅力がない都市では、優秀な人材が集まらなくなるという問題が起こりました。都市行政一般の課題が、ハードを中心とした生活の基礎的条件の整備から変化したのに対応しており、全国の自治体は美術館や多目的ホールなどの文化施設の整備を進めました。しかし、舞台芸術の制作や上演機能をもった「本格的な劇場」を建設・整備した事例は、ほとんどありませんでした。
 人々の生活意識が変わり、芸能やスポーツなど広範な文化が求められ、しかも1975年あたりを境に、自身が「文化の創造者、表現者として遊び楽しむ」方向をめざすようになりました。また、舞台芸術の世界では、地球規模の交流を行い、新しい舞台芸術を創り出そうとする動きが広がっています。今日、舞台芸術の構造は、この二つの方向から変化しているわけです。
 こうした状況に対応できる「新しい劇場」の開発は、市民や世界中の人々の要求に応える、重要な公共の事業になりつつあると考えるべきなのです。
 舞台芸術総合センター(仮称)は、人々に「自己表現」の機会を提供し、新しい「地球文化」創出のための壮大な実験場であるべきです。

舞台芸術総合センター(仮称)の機能と役割

 大阪市から諮問を受けた委員会は、舞台芸術総合センター(仮称)の性格を次の4点にまとめました。
 第一に「世界の優れた舞台芸術の桧舞台として高度な風格と祝祭性を備えた劇場」、第二に「オリジナルな舞台芸術の創造拠点」としての役割を果たすこと、第三にこれらの目的を果たすため「多様な劇場技術を開発し、実験できる機能を備え」、第四に「優れた舞台芸術の提供を通して、市民に誇りと喜びを提供する」ことです。
 現代では、既存の「優れた舞台芸術」もさることながら、新たな舞台芸術を生みだそうとする動きが広がっています。アジア・太平洋地域一帯では、経済活動とともに、文化の面でも若い創造的な活動が急速に姿を現しつつあります。
 舞台芸術総合センター(仮称)には、世界各地に潜在する舞台芸術の要素や才能に声をかけ、新しい舞台芸術を創り出す機会を提供することが求められます。これは「世界都市」をめざす大阪の、世界貢献の重要な一翼を構成するとも考えられるのです。
 こうした役割を果たすため、舞台芸術総合センター(仮称)は、運営方法にも独特の工夫を凝らします。  第一に、多様な文化を融合し独創的な作品を創造するために必要不可欠な、複数のプロデューサーによる柔軟な運営、つまり「プロデューサーズ・シアター」としての性格です。
 第二は、多様な芸術価値と方法論を包含し、現場に触れる機会をつくり、創造の第一線に立つ人材の育成機会を提供する「ユニバーシティ・シアター」です。
 第三は、音響や映像の最新技術を舞台芸術の創造に応用し、同時に、多様なメディア機能を駆使して、成果を、世界に向けて発信する「メディア・シアター」としての性格です。

「世界都市・大阪」の新しいシンボル

 計画の予定地である中之島の西部地区は、古くは商都大阪の港湾貿易機能を担い、将来は近代美術館や国際会議場が立地することを考えると、舞台芸術総合センター(仮称)は、舞台芸術に限らず、大阪市が世界へ向けた「新時代のシンボル」としての役割を期待されます。
 近代以前の大阪は、市民が歌舞伎を盛り立て、ファッションとグルメの文化を持ち、花と緑を楽しんだ芸術と文化の都でした。ところが明治以降は「煙の都」として繁栄し、イメージも良好とは言えなくなりました。しかし1990年、都市生活のゴミを堆積して出来た台地の上で、国際花と緑の博覧会を開催し、「文化都市・観光都市・世界都市」としての道筋を見極め、歩き始めました。
 近代の東京は、「鹿鳴館」に象徴されるように、欧米文化を輸入し分配するという役割に専念してきました。過去100年間は大事だった役割ですが、これからは、世界各地に生まれ育つ才能に呼びかけ、21世紀の人びとを感動させ、勇気づける文化を創造し、世界に還元することが、世界の人びとに支えられ豊かな社会を実現した日本の果たすべき役割だと思います。
 「1ドル360円」の時代にも我々日本人は懸命に貯蓄をしてアメリカに出かけたことを考えますと、円高が進んだことで、観光客が減少した日本は、それだけの価値と魅力しかないことになります。それは製造業での国内空洞化より深刻な問題かもしれないのです。
 世界都市をめざす大阪で、さしあたり舞台芸術の分野において、世界の人々と新しい文化の創造に挑戦することにより、未来的可能性を大胆に試してみる必要があるのではないでしょうか。
(プロフィール)

高田公理/武庫川女子大学教授:

京都大学理学部植物学科を卒業後、シンクタンク主任研究員、愛知学泉女子短期大学教授などを経て現職(都市文化論、観光社会学、比較文明学)。
著書に『<いまどき>の世相学』『都市を遊ぶ』『酒場の社会学』『自動車と人間の百年史』『情報快楽都市』など多数。現在、新しい観光学を提唱している。

宛先・お問合せ先

大阪市市民局文化振興課「ワークショップ」係
〒530 大阪市北区中之島1ー3ー20
TEL. 06-208-9167

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